ニュージーランド南島で大発生している、問題のディディーモ(Didymo)

2006年1月末ニュージーランド南島で視察したDidymo(ディディーモ)の現状とDidymo(ディディーモ)が日本で繁殖する可能性
 

 ■ニュージーランドのDidymo(ディディーモ、ディディモ)問題について、詳しくこちらから。
 ■釣り人がDidymo(ディディモ)から河川を保護する為の厳守事項、消毒方法等はこちら。
 ■ディディーモとはなんですか? バイオセキュリティーNZのよく聞かれる質問を、少しずつ翻訳していきます。
 ■北アメリカでも確実にディディーモが広がっている 北アメリカの水辺を旅する人々に。

ディディーモ(Didymo)問題について

 ニュージーランドの南島でDidymosphenia geminata=Didymo(ディディーモ、ディディモ)とかrock snot(石鼻汁)とよばれる水藻の繁殖が確認され、問題になっています。
この水藻は釣り人によって各河川、湖沼に移される可能性が高いため、南島の有名河川、WAIAU川や、MARAROA川が禁漁になってしまいました。その他の地域にあるHAWER川、AFURIRI川、BULLER川でもこの水藻が発見されていて、合計10箇所の河川へ感染しています。詳しいマップはここをクリック
 この水藻は水底に発生する藻の一種で、もし大発生すると巨大なマット状となって湖底や川底を覆い尽くす性質があります。ニュージーランド南島で2004年に見つかり、南半球で発見されたのは今回が始めてです。
事を重大と見たニュージーランド・バイオセキュリティーは、各所へディディーモの感染を防ぐために2005年12月、南島全てをコントロールエリアに指定しました。
 厳守事項として、目に見えない種子の拡散を防ぐため、全ての道具、靴や釣具、衣服、車など、南島のいかなる河川の水に浸かった物は、他の水系に入る前に必ずきれいにしなければならないと法制定されました。(以上、Wikipediaより)
 ディディーモを故意に拡散した者には懲役5年そして/もしくは$100、000(約800万円)の罰金という厳しい罰則からしても、ニュージーランド政府の対応の真剣さがうかがえます。
※WAIAU川、MARAROA川は、この2月の大洪水でディディーモの殆どが流され、禁漁が解除されています。

南島で視察したDidymo(ディディーモ)の現状

 2005年12月末の時点では、ニュージーランドの南島、オタゴ、サウスランド周辺の4河川で発見されたという情報でしたが、2006年1月末、私たちが訪れた時点ではかなり広範囲の地域に広がっているようでした。
 モンスター・ブラウントラウトのフライフィッシングで有名なオレティ(Oreti)川も多分にもれずディディーモがすでに確認されてます。
 隣接するマタウラ(Mataura)川は無事な状態でしたが、上流部が近いマタウラ川、オレティ川間は釣り人の往来が多く、また、鴨、白鳥などの水鳥によって運ばれる可能性もあるはずですから、世界的にフライフィッシングで有名なマタウラ川の鱒釣りも時間の問題といった危機感があります。

Didymo(ディディーモ)が大繁殖しているHawer川
             河原周辺や瀬の中、茶色や黄色く見えるのが全てDidymo(ディディーモ)

 フライフィッシングが目的で入川した私たちも、バイオセキュリティー・ニュージーランドのガイドラインに従い、生物分解性(Biodegradable)の洗剤を5%ほどまで薄めて、ウエーダーやウエーディング・シューズ、釣り具の洗浄を実行しました。
 最初に入った川はディディーモが殆ど見られない河川でしたので、一応の儀式的なものとして行なう程度でした。ところが、行程中、何の気なしに入った、ワナカのハウェア湖から流れ出すハウェア川でその重大さを目の当たりにしたのです。
 高台から眺めるハウェア川のプールは美しいグリーン色、そして、底はなぜか黄土色でした。黄土色の岩や石だろうと思って近づいた川床を見て、誰もが目を疑いました。そこは一面に広がるディディーモの群生地だったのです。
 急流の中の直径1mもある大石を3〜6cmもある厚さで黄土色に覆い尽くし、踏んだ感触は毛足の長いじゅうたんそのもの。踏みつけても石の感触が感じられず、滑りやすく、ウエーディングがままならない状態でした。
 上流部、酸素の吟有量の多いチャラ瀬では、ディディーモが川床を覆い尽くし、石と石の隙間が見られないような場所もある程です。このような状態では瀬を好む水生昆虫達は生存できないのではという不安が募りました。
 成長しきったディディーモは濡れたティッシュペーパーがちぎれたような色、形状となり流され、冬に落ち葉がたまるようなバックエディ(流れの巻き返し)に、白い帯状となって厚く堆積していました。
 ニンフ・フィッシングを試していた友人は、キャストごとにフックに付着してくるディディーモに閉口し、沈める釣りをあきらめ、ドライ・フライ・フィッシングのみの釣りに限られてしまったほどです。 魚とファイトをしていても流れディディーモがリーダに絡みつくなど、見た目以上に深刻な状況であることを実感しました。

ティッシュペーパーような形状となり次々と堆積する。
              ティッシュペーパーような形状となり次々と堆積する。

 Didymo(ディディーモ)が日本で繁殖する可能性

 このDidymo(ディディーモ)はヨーロッパ周辺、北アメリカ北部にに同じような藻が在来種としてあることから、ヨーロッパ、もしくは北アメリカから、釣り人もしくはボートに付着して持ち込まれたのではと推測されているようです。
 ここ10数年、世界中から脚光を浴び多くのフライフィッシャーやカヤッカー、その他の観光客がおとずれる観光王国ニュージーランドへの大きなしっぺ返しでしょうか。

 ということは、ニュージーランド南島の川や北米の川でフライフィッシングなどの釣りをした観光客が、Didymo(ディディーモ)を日本に持ち帰ることもありうるわけで、もし、この藻が日本に上陸し、蔓延した場合のことを心配する必要があるのでは、と思います。

 日本には伝統的なアユ釣を始め、ありとあらゆる釣りがあります。ディディーモが大発生すれば、釣針や糸にディディーモが掛かって釣りにならないでしょう。 そればかりではなく、このディディモの繁殖でアユの食べ物ケイソウや水生昆虫の食べる小さなコケ類を失うことにもなりかねません。水生昆虫が育たなければ、小魚や渓魚が生息できなくなるでしょう。
 仕掛けを流すたびにディディーモが針に付いてくるだけの魚のいない川。 考えただけでも恐ろしい事態です。

 今現在入手できる資料からは、ディディーモが日本の河川で大発生できる生物であるか否かは全く不明です。
 しかし、鱒の育つ環境で繁殖することのできる種類であり、その拡散、成長速度の早さからみて、もし日本に持ち込んだ場合、魚の生存を脅かし、川や釣りにかかわる産業が打撃を受ける可能性も十分あります。

 今、この危険な侵略種、ディディーモを日本に持ち込む可能性のある生物は、ニュージーランドや北米からの渡り鳥、と釣り人、カヤッカーです。 釣り人の道具、特にウエーダーやウエーディングシューズは乾きにくく、ディディーモの種子を生きたまま運び込むことが考えられます。 また、カヤッカーのスプレイ・スカートに付着してくるかもしれません。

 この侵略的不要生物を日本に持ち込まないようにするには、今、ニュージーランドの南島、北米に出かける人々が、事前に認識し、予防して頂くことが最も重要なことであることは間違いありません。

 そこで、どれほどのディディーモ情報が入手可能かインターネットで検索したところ、2006年2月15日現在Didymoの英語検索では60000サイト以上見つかったのに比べ、Didymo、ディディーモ、ディディモとそれぞれ日本語検索して、問題の水藻、「Didymo」について見つけられたのはたった2〜3件だけでした。
 そのことからみても、ほとんど日本の人には知られてない事実と考えられます。

 これから日本の渓流の解禁と、ニュージーランドのシーズン終盤が重なる時期となり、ニュージーランド南島のフィッシングから帰国して、すぐに、同じ釣り具を使用して日本国内で釣りに出かける人もいるでしょう。
 連日のように日本人がフィッシングを楽しみに出かけているニュージーランド南島から誰かのウエーディングシュズに隠れ、明日にでもディディーモ(Didymo)がやってくるかもしれません。

 また、ニュージーランド、北米以外でも、ディディーモの確認されている北ヨーロッパへフィッシングやカヤックを目的で渡航する場合、同じように注意、予防が必要です。

※Didymo(ディディーモ、ディディモ)の確認されている国は以下の国々です。
ニュージーランド南島、アメリカ西部、カナダBC州、フェロー諸島(スコットランドの近く)、ノルウエー、 スバルーバル(ノルウエーの近く)、イギリス、アイルランド、スエーデン、、フィンランド、フランス、スペイン、スイス、トルコ、ウクライナ、ポーランド、ルーマニア、、ハンガリー、アイスランド、ロシア 、キルギスタン、カザフスタン、チャイナ、モンゴル、パキスタン
 .(GLOBAL INVERSIVE SPECES DATABASE より)

 カナダ、BC州、バンクーバー島では、1989年以来ディディモが広がり始め、島全体の3分の2河川がすでに感染しているといわれています。また、本土側ではスティルヘッド・フィッシングで有名なバークレー川、トンプソン川や、 コロンビア水系、クートニー水系で大量の発生が確認されています。
 以上のことからみても、カナダへフィッシングやカヤックなどを目的に出かける人も細心の注意が必要です。

 できれば、これを読んだ皆様の協力で、ニュージーランド南島や世界各地を旅する人々にDidymo(ディディーモ)の脅威を呼びかけていただければ幸いです。

 誰もDidymo(ディディーモ、ディディモ)を持ち帰らず、日本の川が永遠であることを祈ります。


成長したDidymoディディーモ。白い部分がちぎれて流されていく。
          成長したDidymoディディーモ。白い部分がちぎれて流されていく。



 追伸
 先日のディディーモの件で、調べていたら、1月下旬にUSA、Missouri州のWhite Riverでも見つかったようです。これも釣り人の手(足)によって運ばれてきたと考えられています。
 Didymo in Missouri?
According to this article by Eric Adler in the Kansas City Star, Didymo (see our recent coverage of New Zealand's Didymo problem) has been found in Missouri's White River. "Missouri officials said it most recently has been found in the White River system, near Bull Shoals Dam and around Table Rock in Arkansas just south of the Missouri border."

 いろいろな内容から総合しますと、湖から流れ出す川や、ダム下のテールウオーターなど水位が安定している、冷水・温水河川の日当たりの良いところに繁殖する傾向があるようです。

 自国の自然は自分の貴重な財産であることを皆が認識し、日本の自然を各自で守って欲しい時が、今、来ていると思います。

                                                  king



 ニュージーランド南島におけるディディーモ問題の経緯、消毒方法等、厳守事項。

 バイオセキュリティー・ニュージーランドの訳です。
■ニュージーランド・バイオセキュリティーの英語版はこちらから。(pdf)

状況

 Didymosphenia geminata=Didymoは、2004年10月WAIAU川とMARAROA川の下流域で発見されました。
2005年9月にはTASMAN地区のBULLER川、とOTAGO地区のHAWEA川の上流部で数箇所にわたり見つかっています。
 Didymoはこのままの状況では、ニュージーランドの全河川に広がる可能性があります。
 Didymoが南半球で発生したのはニュージーランド南島が初めてのケースです。北半球のの北部では自然に広がりつつある状況です。
 Didymoは人間の健康を害することはないということです。

 説明
 Didymoは淡水性の珪藻の一種であり、河川や波に洗われる湖岸に大量発生することがあります。
この藻は川床に茎を植え付け、自身を固定し、この茎が大量に集まって石を包み込んだり、水中の植物やその 他の物に厚いいマット状となって付着するのが特徴です。
 川の流れの中で固定された藻の先は、白く変色し、ティッシュペーパーのように見えます。見た目はヌルヌルした感じで、感触は濡れたワタのようです。

 感染を防ぐ
 Didymoは、大きく成長するまでで肉眼では見ることが出来ない小さな微生物です。Didymoが生き残り、他の水系に拡散するには、たったひとっの種子があれば充分発生することができます。Didymoは淡水に生息するから、水で洗い落とそうとすると生き残るのを助けていることになってしまうので注意してください。
 Didymoは1993年に危険生物法で不要生物に指定されました。それを知りながら不要生物を拡散した者には懲役5年そして/もしくは$100、000(800万円)の罰金が課せられることになります。

 Didymoを広がらないようにするには、できれば全ての道具、靴や釣具、衣服などを一つの水系のみの使用と限ることが必要です。

もし水系を移動しなければならない場合、以下のことを厳守してください。※の部分は注釈です

 ※現在南島のどの川はDidymoで汚染されていて、どれは安全と保証するのは不可能なため、全ての水系間を移動する際に処理が必要です。下記の事項を守らない場合は違法行為として処罰されます。

1:INSPECTよく見ること
川を離れる前に付着した藻などを落とし、どこか他に見落としてないか探してください。それは、感染場所に残すこと。もし後で見つけたら、洗い流してしまわずに、下記の方法で処理をして下さい。


2:CLEAN
 すべての道具を60度のお湯か2%の漂白液、5%の塩水、5%のオムツ洗剤液、5%の消毒液(殺菌性のあるもの)、5%の食器洗いの洗剤に最低1分浸けて、擦る。 
 2%の分量は、10リッターの水に200ml。5%は500mlです。

 ※地元のフィッシングガイドは自然と道具にやさしい生物分解性(Biodegradable)の食器用洗剤を薦めていました。
 ※洗浄剤、消毒液は、衣類、ウエーダーなどなどの生地を傷める場合があるので注意するようにと、
   ■Didymo and kayakers に記載があります。
 ※60度のお湯はウエーダーのネオプレーン接着面が剥離して水漏れの原因になることがあるので注意。
 ※食塩でリールなどを洗浄すると錆の原因となるので注意。

3:DRY
 上記の洗浄が出来ない場合(家畜などへの心配がある状況)完全に乾かし、更に48時間待ってから使用するようにしてください。

 Equipment that remains damp or could have pockets of trapped moisture after use will require longer drying times because the 48 hour drying time begins after dampness and trapped moisture have evaporated. Some equipment may never ready complete dryness depending upon how and where it is stored (shoes, waders, life vests, wetsuits, spay skirts, jet boat intaks, tyres etc) and therefore should always be chemically treated.
  湿気を保持する道具やポケットなど湿り気がこもり易い道具は、使用後長い時間乾燥時間が必要です。48時間の乾燥時間は、全ての湿気や閉じ込められた湿り気が乾燥してからの時間です。
  道具によっては、保管場所やその方法により完全に乾かないため、使用できない状態かもしれません(靴、ウエーダー、ウェットスーツ、カヤック用のスプレイ・スカート、ジェットボートエンジンの水冷用水路、タイヤ、など他)。それらの道具は、常に薬品で処理する必要があります。

 魚、植物、石など川にあるものを他の水系に移動しないようにしてください。


ディディーモが及ぼす実際の脅威
 ディディーモは莫大に繁殖する侵略種である。
 その厚く成長する生態は淡水の魚、植物、水生昆虫などの適正生活環境を奪い有害である。
 河川の美観はことごとく損なわれる。


バイオセキュリティー・ニュージーランド
[AG]-12/17 07:57 002


         ディディーモ(Didymo)から河川を保護する為の厳守事項の看板が各所に見られた。



New Zealand Newsから。

In a plea to all river users over the coming holiday period, Bryce Johnson asks all Kiwis and visitors to New Zealand to, “take this biosecurity threat seriously and go the extra mile to thoroughly clean everything that has been in any river before moving to the next. This is as important between South Island rivers as it is moving between the South and North Islands. These are your rivers, and their future is in your hands.”

ホリデーシーズンを前にして河川を利用する皆さんに希望する。Bryce Johnsonはこう語る。「キーウイ(ニュジーランド人)や観光者は、今回の生態系の危機を真剣に考えてほしい、そして、河川に浸した全てを他の河川に移動する前に細心の注意を払ってきれいにするように。これは南島の河川の間を移動するのと同じように、南島と北島間の移動でも重要である。
これらはあなたの川、そして、その未来はあなたの手にかかっている。

以上、New Zealand Newsから。
[AG]-12/21 10:52 013


以下、ディディーモ(Didymo)に関係するサイトです。

■ディディーモとはなんですか? バイオセキュリティーNZのよく聞かれる質問を、少しずつ翻訳していきます。
■北アメリカでも確実にディディーモが広がっている 北アメリカの水辺を旅する人々に。
Patagonia:環境エッセイ パタゴニアのサイトの中でも環境問題として取上げられています。 
■バイオハザード UDidymo(ディディーモ)の脅威. FFジャーナリスト佐藤成史氏のDidymoに対する所信です。
■Didymo(ディディーモ)の脅威 続編 バイオハザードU Didymo(ディディーモ)の脅威 続編
■川そして地球を愛する全ての皆様へ 北海道屈斜路ガイドステーションわっかさんのディディーモ情報です。
■GLOBAL INVASIVE SPECIES DATABASE 特性、性質、分布などDidymoの詳しいことが理解できます。
■Fish & Game New Zealand ニュージーランドフィッシュアンドゲームのサイトです。
■BIOSECURITY NEWZEALAND バイオセキュリティーニュージーランド。NZの詳しい事情がわかります。
■Didymo写真集 バイオセキュリティーニュージーランドのDidymo写真集。恐ろしい生物です。
■Didymosphenia geminata (Didymo) and kayakers カヤッカーとDidymoについて書かれた記事です。
アメリカでも?
■Mid Current FlyFshing News アメリカ、ミズーリー州のWhite RiverでDidymoが確認されました。
■A New Aquatic Nuisance for North America アメリカのFFFでも問題として取り上げられています。
■Environmental Protection Agency アメリカのディディーモが確認された場所のマップです
カナダでも?
■Didymo in British Columbia Streams カナダ、BC州のDidymo事情です。
ニュージーランドでは・・・。
■Didymo Spreads Into Ahuriri River 2月21日アフリリ川でDidymo確認。これで、NZ南島10地区に感染。
■Fiordland Rivers Sports Fishing Authorisation フィヨルドランド国立公園で釣りをする人は許可証が必要です。

 先日訪れたニュージーランドのディディーモ事情の深刻さに、古い友人、佐藤成史氏の協力のもと、
日本の河川の将来を思いカナダから発信しています。
 佐藤成史氏をはじめ、ご協力して頂いているみなさまに、この場を借りて感謝申し上げたいと思います。

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