アメリカ・ミズーリ川で撮影したディディモ(10,14,2006)
アメリカ・ミズーリ川で撮影したディディモ(10.14.2006)


 北アメリカでも確実にディディモが広がっている!

 ニュージーランドでディディモ(Didymo)問題が起きた2005年から2006年前半に掛けてバイオセキュリティーニュージーランドをはじめとする多くの機関からディディモに関する情報が入手出来るようになりました。それを受けてアメリカのF.F.F.(Federation of Fly Fishers)でも「ディディモは北アメリカの水生有害生物」として取上げるようになり、今日、ディディモがどのような繁殖行動をする生物なのか、生物学者の間で注目されています。
 本来ディディモは北アメリカ、北ヨーロッパを原産とする珪藻類であり、高地の清純な冷水域のみに繁殖する希少な美しい珪藻として専門家の間で知られていました。 ところが、ここ数年の経緯からディディモは北アメリカの多くの河川で極端な繁殖をすることができる種であり、また、2005年ニュージーランド南島の河川で劇的に繁殖した事実により、他の生態系に大きな影響をあたえる侵略種であると考えられるようになりました。
 北アメリカではすでにカナダ・バンクーバー島、ワシントン州、モンタナ州、アイダホ州、コロラド州、アリゾナ州、カリフォルニア州、テキサス州、アリゾナ州、サウスダコタ州などの河川でディディモが確認されており、その棲息圏は次第に広がりつつある状況です。
 ■ニュージーランドのDidymo(ディディーモ、ディディモ)問題について、詳しくこちらから。



 モンタナ州、アイダホ州で見つけたディディモ

  ■ミズーリ川

アメリカ・ミズーリ川で撮影したディディモ
アメリカ・ミズーリ川、砂利床を覆い尽くしたディディモ(10.14.2006)

 上の写真は2006年10月モンタナ州ミズーリ川で川下りをした際に撮影した写真です。ミズーリ川はアメリカを縦断し大西洋に流れ出すアメリカ最長の河ミシシッピー河の上流部にあたります。今回川下りをした区域は、モンタナの首都ヘレナの北45マイルにある鱒釣りで有名なウルフクリークからクレイグの区間です。
 フライフィッシングをしながら川下りの途中に上陸した中州で、不意に見覚えのある黄色いものを川床に発見しました。その形容は、ニュージーランドで目撃したあの黄色く房状になった藻、ディディモです。流速の早い川の中央にはこれらの藻の発生はは見られませんでしたが、川下りの途中、所々にある中州に上がると岸よりの水深1m以内のところで、ディディモによく見られる形態特徴である水草の先に球状に寄生していたり、砂利床を覆い尽くすように発生していました。川の規模からいえばほんのわずかといった感じですが、日当たりの良い住み心地の良さそうなところには広く繁殖していました。




 ■ヘンリーズフォーク川

ヘンリーズフォーク川・ラストチャンスにある、お立ち台から見たディディモの繁殖
アメリカ・アイダホ州・ヘンリーズフォーク川・ラストチャンスにある、お立ち台から見たディディモの繁殖
(岸よりの黄色い部分が藻に寄生したディディモ)(10.17.2006)

 ミズーリ川を後にし、次に向かったのはトラウトフィッシング究極の地、アイダホ州ヘンリーズフォーク川です。北アメリカの中で日本人の釣り人最もに人気のある川と思われるヘンリーズフォーク川。毎年フィッシングのために海を越え、はるばるこの川を訪れる人の数は何百人ほどでしょうか?偏食をする気難しい鱒たちが釣り人を翻弄
しつづける楽園です。
 2006年10月17日、ラストチャンスの下流にあるハッチやライズを観察する場所として有名なお立ち台にベイティスの羽化を探して訪れた時に、足元に広がる黄色い枯れたような藻が目に付きました、近づいてよく見ると、それは枯れた藻ではなく在来の水草に寄生している黄色い藻でした。それは水草の先端を球状に包み込むディディモ特有の寄生のしかたです。こちらも川の中央部では見られませんでしたが、流れが緩やかな岸よりに見られました。下流のパインへブン周辺でも見られましたから、広範囲に広がっているものと考えられます。

ヘンリーズフォーク川、金魚藻や他の藻をおおい尽くしたディディモ
アメリカ・アイダホ州・ヘンリーズフォーク川、藻に取り付いたディディモ(10.17.2006)



 ディディモが北アメリカから持ち込まれる可能性

 アメリカのUS E.P.A (U.S.Enviromental Protection Agency)にこれらの画像を送り問い合わせた所、「正確に特定するためにはサンプルを採集して顕微鏡で見る必要があるが、見たところではこれらはディディモもである可能性が非常に高い。」との回答を得ました。

 そこで、地元の釣り人はディディモどのように考えているのかと思い、フライフィッシングのメッカ、ウエストイエローストン在住の釣り人にディディモという藻の存在を問いかけて見ました。すると、意外にもその反応は「それはなんですか?」とか「そんなものは聞いたことがない。」というくらいのそっけないものでした。実際、US E.P.A からの返事の中に「ディディモ(Didymosphenia)は北アメリカ原産の植物であり、モンタナ州やカナダ・ブリティッシュ・コロンビア州でのディディモの存在は、棲息圏内での繁殖と考えています。」といった内容があることからも,
北アメリカでのディディモの拡散は自然の摂理と考え、ニュージーランドのように釣り人達に法律規制をしてまで拡散を防ぐ必要のあるほど大きな問題としては取上げていないようです。

 ここでで注意しなければならないのは、北アメリカでは旅行者へのディディモ情報がほとんどないという事です。ニュージーランドのように政府単位で真剣に外来生物拒否に取り組んでいる国では空港などでの検疫が厳しく、また各所に張り巡らされたディディモに関する看板などにより案内、規則がはっきりとしているので、旅行者は自ずと外来生物の存在、危険性を認識できます。
 しかし、北アメリカではディディモは原産の生物であり、大陸内の拡散は自然の摂理と考えているため、河川利用者に対する何の注意書きや規則もありません。そのため、旅行者が河川を利用して発生するディディモ海外持ち出しは各自の自己責任に委ねられることになります。
 国際空港での検疫検査もない日本の現状では、旅行者各自が旅先のディディモなどの生物の存在を認識していなければ、いともたやすく日本国内へ持ち込んでしまうことになりかねません。



  ミズーリ川、ヘンリーズフォーク川にディディモが存在する可能性があることを、何人の日本人が知っているだろうか?

 US E.P.A からの報告では、釣り人がフエルトソ−ルのウエーダーでディディモを移動できるという明白な証拠があり、一つの水系から他の水系、特に、一つのフィッシングエリアから他のフッシングエア(アメリカから日本など)、に移動する際は道具や衣類を洗浄することが重要であると忠告しています。
 また、最近、ニュージーランドの調査員からの報告によれば「道具に付着したディディモが水中以外で40日間も生存していた。」との報告もある事からも、海外からの帰国後に行なう道具の洗浄は、必ず必要な国内河川への保護対策といえます。


 飛行機旅行が一般的になった昨今、海外旅行はとても手軽に楽しめる遊びとなりました。雑誌等の情報により北アメリカにに出向く釣り人が多くなるに比例して、外来生物が国内に侵入する可能性が高くなることは事実です。北アメリカの水辺で遊ぶことは、ディディモなどの外来生物を日本国内に持ち込むリスクがあることを認識し、各自が北アメリカからの帰国後にウエーダーウエーディングシューズ等の道具の洗浄をバイオセキュリティーNZのガイドラインに従って行なうことで、外来生物の侵入を防ぐことができるのではと考えます。

 今のところ、ディディモが日本国内で繁殖できる生物であるか否かは、現在ある少ない資料からでは判断できません。しかし、アメリカ国内でも次第にその棲息圏を広げつつあるディディモ。それは、ニュ−ジーランドのようにウエーダーを河川の移動ごとに洗わなければならないという法律があってさえも広がりつつある生物です。 もし、日本へ持ち込んでしまったらその棲息環境がディディモにとって不適である以外、生存を続け、釣り人などの助けを借りて各地へ広がっていくことでしょう。

 海外の水辺を旅する人はくれぐれも外来生物を国内に持ち込まないよう、細心の注意を払って頂けることをお願いしたいと思います。





カナダ・ブリティッシュコロンビア州キャンベルリバーのディディモ

 ■キャンベル川


カナダ・キャンベル川のディディモ、背景の川床が黄色く見える(10.02.2006)


 カナダ・ブリティッシュコロンビア州でもバンクーバー島をはじめ、バークレー川、サウストンプソン川、ケトル川、コロンビア川、クートニー川などでディディモの繁殖が確認されています。バンクーバー島では1989年に発見されて以来、島の中央部を中心に島全体の河川の3分の2の河川に広がっているといわれています。
 今まではカナダでの存在すら全く知らなかったディディモでしたが、2006年10月、バンクーバー島の東岸にあるキャンベルリバーに流れるキャンベル川でディディモを実際に確認しました。キャンベル川は上流の発電用ダムで周年水量をコントロールされているため、安定した水量を好むディディモには最も適した環境です。繁殖場所は日当たりの良い浅瀬で、川床にある玉石を黄色く覆い尽くし繁殖していました。キャンベル川の場合も川全体といったほどではなく、木々に日差しをさえぎられた、紫外線の乏しい区間での繁殖は見られませんでした。住み心地の良いところでの繁殖といった感じです。 

 キャンベル川は、毎年秋のサ−モンの溯上時に、イタリア、ドイツ、スイス、ノルゥエー、イギリス、アイルランド、日本などから多くの釣り人が訪れる国際鮭釣り場です。ディディモがすでに繁殖している地域からの釣り人はともかく、釣り人がディディモを自国に持ち帰らないことを切に希望します。




■ニュージーランドのDidymo(ディディーモ、ディディモ)問題について、詳しくこちらから。

世界各地へ拡散しつづけるディディモの深刻さに、日本の河川の将来を思い、ここカナダから発信しています。
ご協力して頂いているみなさまに、この場を借りて感謝申し上げたいと思います。

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